プレミアムな熟成をもたらす 天然の冷蔵庫「風穴」とは?
濃密で官能的な甘味が人気を呼んでいる「想定内 梅酒」。瓶詰め後、マイナス5度の冷蔵庫でしっかりと貯蔵され出荷の時を待ちますが、一部の梅酒は、天然の冷風が吹き込む「風穴」(ふうけつ)と呼ばれる場所で貯蔵されます。
年月を経ることで梅酒の豊かな風味が引き出されることはもちろん、「風穴」で熟成されたものは格段に味わいが深まることから、より特別な梅酒「WIND CAVE AGED」として、通常ラインと別のラベルで販売しています。
「想定内 梅酒」を貯蔵しているのは、純米大吟醸「想定内」「想定外」の製造元、大信州酒造(長野県松本市)より車で40分、仕込み水の水系である梓川沿い上流の稲核(いねこき)風穴郡。天然の風穴を伝統野菜である稲核菜やお酒の熟成などに利用しています。
想定を遥かに超える仕上がりを生んだ「風穴」貯蔵とはどのようなものか。味わいに深みと円熟味を生み出す、風穴貯蔵についてご紹介します。
先人の知恵がもたらした天然の冷蔵庫
「風穴」は、山の地すべりによって石が積み上がり、その斜面のすき間から自然の冷風が吹き出す吹き出し口のことを指しています。
夏季の寒暖差が大きい地域にみられる現象で、温度差や気温差で生じた大気の循環が原動力となった環境に優しいクリーンエネルギーです。
冬季に冷たい空気が取り込まれ、石や岩などの堆積物に冷気が蓄積されます。春先の雪解け水が、冬季に蓄冷した岩などを通ることで地下に氷の塊を作り、夏季に下方に流れ込んできた温かい空気が、氷に冷やされて0〜5度の冷気を吹き出します。
風穴は全国各地で見られる現象。昔から山で働く人たちは、夏の仕事の合間のひとときに涼をとるため「風穴」を活用していたと言われています。
江戸時代に入ると、風穴の周りに壁や屋根で囲い、冷気を閉じ込める「風穴小屋」が作られました。各家庭ではその小さなスペースを、漬物などの保存に利用。風穴は、電気のない時代の生物などの保存場所として重宝されてきました。山岳地帯に住む人たちにとって、風穴は、昔から身近にある文化のひとつだったのです。
「稲核」は、風穴小屋の発祥地
「想定内 梅酒」が貯蔵される、長野県松本市安曇の稲核(いねこき)と呼ばれる地域では、風穴が密集し、草木が生い茂る山の斜面に大小さまざまな風穴小屋を見つけることができます。江戸時代後期に全国へ広まったとされる風穴。実はこの稲核が発祥地なのです。
もともと家庭利用が主だった風穴は、蚕糸業が発展した明治時代には、養蚕業にも活用されはじめ2階建てほどの大きな小屋が建つようになります。風穴の先駆けとも言われる前田家の「風穴本元」は、その大きさから特に有名です。
大正時代になり、電気が普及し家庭用の電動式冷蔵庫が登場すると、風穴は次第に廃れて姿を消していきます。
しかし、群馬県下仁田町の風穴が、ユネスコの世界遺産に登録(2014年)されたこと、クリーンなエネルギーが注目されるようになったこともきっかけとなり、風穴は再び見直され、各地で復元し再び利用されるように。
もちろん風穴の元祖である稲核や付近のエリアも。地域に根付いた文化であり付加価値をうむものとして見直され、現在も地元の伝統野菜である稲核菜や松本市内の酒蔵のお酒などが貯蔵されています。
やさしい自然の冷風が深い味わいを生み、高級梅酒をさらなる円熟へ
風穴で貯蔵された梅酒を試飲してみると、冷蔵庫貯蔵のものより豊かな甘みがあり、バランスよく深みのある味わい。後味の伸びもよく、より円熟味が感じられます。
風穴のどのような効果が、梅酒のポテンシャルを引き出したのか、残念ながら科学的には証明されていません。
しかし、通常の電気式冷蔵庫では、冷却方式の構造上、設定温度から2〜3度ほど温度にぶれが生じたり、庫内の詰め込み具合で冷却能力が低下したりする場合もあります。
一方、風穴の特徴である大気の対流によってもたらされる冷風は、ほぼ温度が一定で環境温度による変化もゆるやか。
実際に風穴へ入ってみると、冷蔵庫のような直接的な寒さとは異なり、空気全体が優しく包み込むように冷えている感覚があります。風の対流による自然の空気の循環が、お酒にかかる環境の負荷を軽減しているのです。
なにより官能による味わいの違いが証明されています。酒造関係のプロだけでなく、誰もが認める美味しさ。今後、さらに熟成を重ねることで、ますます奥深さが増していくでしょう。
自然の力を利用したクリーンエネルギーであること、歴史や文化的なストーリーに富んでいることに加え、お酒にプレミアムで豊かな風味をもたらすことが、風穴貯蔵の最大の魅力。
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